天文時計。

天文時計(Astronomical Clock)とは、時間だけではなく、月や太陽、十二星座などの特殊な装置と文字盤を備えた時計のこと。すごく賢い時計ですよね。賢いだけじゃなくて、たいていデザインも優れている。世界でも有名な天文時計といえば、私はチェコ・プラハにある『プラハのオルロイ(Prague Orloj)』を連想します。と言っても、プラハへ行ったことがないので、実物を見たことはないですけどね。私が実際に見たのはイギリス、ハンプトンコート宮殿(Hampton Court Palace)にある天文時計です。ハンプトンコート宮殿は、ヘンリー8世(Henry VIII)ゆかりの宮殿として知られていますよね。もともとはウルジー枢機卿(Thomas Wolsey)宮殿の基礎を築いたそうですが、あまりに豪華で立派な宮殿だったため、王に目を付けられ、「贈り物」として譲渡せざるを得なくなり、ヘンリー8世の手に渡ったという経緯があります。



ハンプトンコート宮殿にあるこの天文時計は立派で目を引きます。1540年にヘンリーが中庭への入口に設置させたもので、ニコラス・クレィツァー(Nicholas Crazter)が設計、時計師ニコラス・アゥアジアン(Nicholas Oursian)が作ったものだそうです。注目すべき点は、この時計の中心に地球があるということ。つまり、これはガリレオ(Galileo Galilei; 15641-1642)やコペルニクス(Nicolaus Copernicus; 1473-1543)が地動説を唱える以前のものなので、太陽が地球の周りを回っているんですね。



そして、3つの異なるダイヤル版が様々な速度で回転して、以下の情報を示しているそうです。
  • 時間(Hour)
  • 月(Month)
  • 日(Day of month)
  • 黄道上の太陽の位置(Position of the sun in the ecliptic)
  • 黄道十二星座(Twelve signs of the zodiac)
  • 年初めから経過した日数(Number of days elapsed since the beginning of the year)
  • 月の満ち欠け(Phases of the moon)
  • 月齢(Age of the moon in days)
  • 月が子午線を通過し、ロンドン・ブリッジで高水位になる時間(Hour when the moon crosses the meridian and thus high water at London Bridge)
最後の潮汐情報っていうのが面白いですね。ハンプトンコート宮殿はロンドン南西部、テムズ川上流のリッチモンド・アポン・テムズ・ロンドン特別区に位置しています。当時は、まだ船が主要な交通手段と考えられており、潮汐時に橋の周辺に現れる急流が危険だったので、非常に重要な情報だったようです。 

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