アウグスティン・スチュワード・ハウス

古くから海外・国内を問わず遠方との交易が盛んに行われていた都市ノリッジ(Norwich, England)。私も大好きな都市の一つです。中世時代には、羊毛取引が盛んに行われ、その利益によって多くの教会が建設され、今でもたくさんの教会が残されています。

実は、1095年に建設されたノリッジ大聖堂(Norwich Cathedral)の近くに、ちょっと目を引く建物があります。それがこの斜めに曲がったアウグスティン・スチュワード・ハウス(Augustine Steward House)。現在は「特別に重要な建造物」としてイギリス指定建造物第2級(Grade II)に指定されています。この家は1530年にアウグスティン・スチュワード(Augustine Steward; 1491-1571)という人物によって建てられた家です。彼はイギリスの政治家さんでした。彼の死後、その家は肉屋、ブローカー、骨董品店、書店そして喫茶店になったそうで、伝えられるところによると、地下室から大聖堂、さらにセントグレゴリー教会へと続く地下通路もあるのだとか。


ノリッジは1578年のペストにより大打撃を受けています。当時、この家に住んでいた家族は、全員が死亡したと信じられ、革のマスクを身に付けた役人たちが来て、モルタルと木材でこのチューダーの家を封印していったそうです。ところが、約5週間後に遺体の回収と家の片付けに戻ってくると、遺体に人間が肉を噛み千切ったような奇妙な歯型が残されていたことに気が付くのです。そして少女の遺体の口や喉から肉片が見つかりました。つまり、全員が死んだと考えられていた家族のうち、少女だけが生きていて、そうとも知らずに封印された家の中で、暗闇を彷徨い、飢えに狂い、両親の肉を食べたというのです。結局、彼女は逃げることも出来ず、暗闇の中で衰弱し、肉を喉に詰まらせて死に絶えていました。それ以降、この家ではポルターガイスト現象が起きたり、また灰色でボロボロの服を着た少女(The Lady in Grey)が、道を彷徨ったり、教会の扉を通り抜けたり、幽霊となって多くの人に目撃されているのだそうです。

私が初めてこの家を見たのは震災後。当時は日本で斜めに崩れかかった家を見た後で、その家を連想してしまい、ちょっと重い気持ちで見てました。その後、何度かこの家の前を通ることがあって、古そうな家だなと気になってはいましたが、最近になって、たまたま灰色の服を着た少女のゴースト・ストーリーを読んで、「あぁ、あの傾いた家のことだ」ということに気が付いたのです。このお家にはそういうお話があったんですね。

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