廃村。ホールサンズ

つい先月だったか、ノーフォーク(Norfolk)の海岸線の村で、暴風雨により地面が抉り取られ、その上に建っていた家が数件崩壊したとニュースでやっていた。イギリスではそのようにして、過去にも家や村が失われたり、今後が懸念されている場所がいくつも存在している。私はイギリスの廃村やら失われた歴史とやらに興味があるもんで、セカンドハンドで買った『The Lost Villages of England』という本を読んでいたんですけど、そこで出くわした廃村の一つが、ホールサンズ(Hallsands, Devon)という村だったんですね。そこで久々の廃村シリーズ。

この村の古い歴史については知られていないようですけど、村のチャペルは1506年には存在していたそうです。とはいえ、1600年以前は人は住んでいなかったようで、村が成長したのは18~19世紀と遅め。1891年には一本道に家37軒が建ち並ぶ人口159人の村で、村人は釣り、特に蟹釣りで生計を立てていたそうなんですね。

 
この村が廃村となった理由がなんだか悲しい。。。1890年、プリマス(Plymouth)近郊で海軍造船所の拡張計画が決まり、建材としてホールサンズから毎日1,600トンもの砂利や砂が運び出されたのだそうです。ところが海岸レベルが低下し始めたことで、住民は警戒心を強めて抗議した。結局、地元調査を行うことが決まったそうですが、『村に重大な脅威を与える可能性は低い』という調査結果を受けて、そのまま浚渫工事(約4年間で計66万トン)が続けられてしまうんですね。1900年までに再び海岸レベルが下がり始め、後の嵐で崖の一部が洗い流され、今度は『さらなる暴風が深刻な被害をもたらす可能性がある』と結論づけられたそうです。1902年に浚渫工事は中止されましたが、時すでに遅し。結局、1917年の嵐が決定的となった。高潮と暴風雨が海岸線を襲い、死者は出なかったものの、夜が明けてみれば、29軒の家は完全に崩壊し、村は壊滅してしまったそうです。

人間の手と自然の力によって失われてしまったホールサンズ。そんな村人たちの補償を勝ち取る戦いは7年も続いたそうです。その後も度重なる暴風などで崩壊が続き、家の復旧や保護する計画もないまま、手つかずの廃村となってしまったようです。

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