慈悲。

憎しみからは憎しみしか生まれない。トロイア戦争に限らないけど、それの繰り返しばかり。イリオスの王子ヘクトルは敵のピロクテテスを殺し、ピロクテテスの友人アキレスはヘクトルを殺し、ヘクトルの弟パリスはアキレスを殺す。イリオス陥落の際には、オデュッセウスがヘクトルとその妻の間に生まれたばかりの赤子を城壁の外に投げ捨てて殺してしまうのです(アキレスの息子が殺したという説もある)。いくら純粋無垢な赤子とはいえ、イリオスの血を継ぐ者に容赦はない。昔の戦いは『No Mercy(ノー・マーシィ)』だった。 つまり、情け容赦しない。哀れと思わない。情を掛けない。それが当たり前の世界だったんですね。じゃぁ、情けのない世界で「マーシィ」という言葉はどうやって生まれたんだろうか?と疑問に思ったんですよ。


英語の『マーシィ(Mercy)』という言葉はノルマン・コンクエスト(1066年)によりもたらされた中世フランス語で「慈悲」を意味する言葉だったようです。英語はそのままの意味が残され、一方フランス語はその意味を失い、感謝の言葉「メルシイ(merci)=ありがとう」に変化した。もともとはラテン語の「merx」という「商品(merchandise, goods, or wares)」 などを意味する言葉に由来したそうです。それが「merces(代価、報酬)」に変化し、罪の代償・赦免という罪人の魂に対する神の「慈悲」という意味を持つようにり、「慈悲」という言葉になった。ではノルマン・コンクエスト以前はどうだったかというと、古英語(Old English)で「milds(ミルズ)」や「milts(ミルツ)」という「慈悲」を意味する言葉が存在していたようです。

憎しみからは憎しみしか生まれない。誰もが分かっている事なのに、昔からどこの国でも繰り返され、なくならない醜い争い。世界平和は永遠に訪れないのでしょうかね。

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