フェン

イースト・アングリア地方を旅していると、平坦な土地であることに気が付きます。電車の窓から見える景色は、コッツウォルズなどの丘陵地帯の景色とは異なり、どこまでも平地。3350年前、イースト・アングリアの大部分は湿地帯(marshland)、浅瀬の川、沼地(fen)で覆われていました。その土壌の名残なのでしょうか?雨が降ると水たまりができるのは当たり前ですが、あちこちにぬかるんだ場所ができて、非常に水はけが悪い場所があるのよね。




そんな平坦な景色を楽しんでいると、遠くちょっとした高台にイーリー(Ely)大聖堂が見えてきます。もちろん目指したのは大聖堂。ここの大聖堂、いくつか映画の撮影にも使用されています。たとえば『英国王のスピーチ(The King's Speech)』ではウェストミンスター寺院として使用されています。映画で見るとどこがどこだかちっとも分からないんだけどねー。それにしても、ここの天井画、素晴らしかったな。



そんなイーリーの町は、かつてフェンと呼ばれる沼地で囲われていました。うなぎがとれたことから、町の名もうなぎを意味する「eel」と、島を意味する「-y」または「-ey」に由来すると言われています。島の上に建つ大聖堂だなんて、フランスの世界遺産、モン・サン・ミッシェル(Mont Saint-Michel )みたいな感じだったんでしょうかねぇ?

余談ですが10年程前、両親とモン・サン・ミッシェルへ行きました。ノルマンディ地方にある幻想的な小島です。ずーっと行ってみたかった場所だったので感激しました。一歩足を踏み入れると、今ではお店が建ち並び、あの有名なオムレツの店からは卵を混ぜるリズミカルな音が聞こえてきます。島内ではなく、島が見える別の場所でオムレツを食べたのですが、ふわっとして口の中でとろけるオムレツでした。実はイギリス南西部にもモン・サン・ミッシェルみたいな場所があります。その名もモン・サン・ミッシェルの英語読み、セント・マイケルズ・マウント。私は行ったことないんですけどねー。

さて、沼地だったイーリーのこの土地、勝手に干上がった訳ではありません。大規模な排水プロジェクトにより開拓された土地なのです。大々的に人の手が加わった土地ということです。当時は頻繁に洪水が起こり、そんな洪水に悩まされてきた土地所有者は、生産性を高めるために排水プロジェクトを望んだのです。実はオリバー・クロムウェルもそのプロジェクトに関心を持った一人。10年間イーリーに住んでいましたからね。チャールズ一世が処刑されたのち、彼は本格的な排水プロジェクトに全面的な支援を行っていますが、それ以前はチャールズ一世が後ろ盾となっていたプロジェクトだったことを理由に反対だったみたい。

排水プロジェクトにはオランダ人技師(Vermuyden)が関わり、水の汲み上げに風力が使用されました。その後は、蒸気ポンプ、ディーゼル、電気ポンプなどが使われてきたようですけれど。そーいえば、イースト・アングリア地方では今でも風車を見ることができます。どれも排水プロジェクトに使われたものだったのかしら?今度調べてみようっと。

参照;http://visitely.eastcambs.gov.uk/history/draining-fens、BBC

コメント