イーム

イギリスでは学校に続き、飲食店なども閉鎖となり、じわりじわりと生活が縛られていく感じです。近くのスーパーでも開店時に列ができていたとか。食料品はまだ何かしら買えていますが、昨日スーパーへ行ったら日用品や生鮮食品の棚も前より空きが目立っていました。約2週間遅れでイタリアやフランス等と同様にコロナ感染者が急増しているイギリス。パニックになるなと言われても、先ゆくヨーロッパの国を見ているので不安にはなりますね。。。毎日ニュースを見るたびに真剣にコロナに向き合っている姿勢と緊迫した重い雰囲気が伝わってきます。家にこもっていたらふとアンネ・フランクを思い出しました。状況は違えど、これよりもっと緊迫した恐怖に包まれて、息苦しい閉鎖的空間から青い空を眺めていたのかなと。。。

さて、タイトルにあるイーム(Eyam, Derbyshire) というのは、ペストで知られているイングランドの村です。「Eyam」は古英語に由来し、「島(ēg)」という名詞が派生したもので、おそらく湿地帯にあった耕作可能な土地、あるいは小川に挟まれた入植地などの状況を示していると考えられています。ドゥームズデイ・ブック(Domesday Book)には「Aium」と記録されているようです。以前、この村の話を読んだことがあるのですが、今回のコロナ・ウィルスに関連してガーディアン紙(the Guardians)が取り上げていたので、自分も書き残しておくことにしました

イームの村の悪夢は1665年に、地元の仕立て屋がロンドンから取り寄せた布の束から始まりました。そこにノミが混ざっていたんですね。それにより感染が拡大。彼らはその恐怖が何であるか全くわかりませんでした。ただ、感染が拡大していく中で、人々との密接な接触によって、何やら病気が移っているようだと推測したのです。そこで、拡散を防ぐために彼らが取った手段は、村全体の『検疫(quarantine)』と『接触を避けること(social distancing)、隔離(isolation) 』。死者が出た場合には、教会墓地ではなく庭やフィールドにその家族の手で埋葬し、葬儀(礼拝)は屋外で行うことにもしたそうです。このペストにより村人口の1/4以上が死亡したといいます。中には1週間のうちに6人の子どもと夫を失った女性や、接触のあった墓堀師もいましたが、感染しなかったという例もあるのだとか。そして、現在でも隣接する村との境界線には『境界石(boundary stone)』として知られる岩があるそうです。前にも似たような話を書いたことがありますが、接触を避けるために、岩の上部に開けられた穴にお金を入れて近隣の村から届けられた食料や薬代を支払っていたそうです。酢には殺菌力があると信じられていて、酢にお金を浸すための穴だったんですね。

Source; Wikipeia
The Boundary Stone, Eyam, Derbyshire

ガーディアン紙では、やはり人々の大移動は感染を広めてしまうということを強く意識すべきであり、イームの話は、病気がどのように伝染するのかを伝えるだけでなく、社会的接触を避けることに成功するか否かがアウトブレイクを封じ込むカギとなりえることにも触れています。危機を回避するには昔も今も基本は同じ手段なんですね。コロナ・ウィルスに直面している私たちは、それらの教訓を適用し、同じ行動をとっている訳ですが、現代の私たちは、当時とは比べものにならないほど、国内に限らず世界中を飛び回って移動し、社会はより複雑化を増しています。だから苦戦しているんですよね。ただ、この教訓が国や地域の指針に活かされていても、個人一人ひとりの意識にまではうまく浸透していない感じがして残念だなって思う。

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