隔離された過去をもつ町。

出掛けた先はニーダムマーケット(Needham Market, Suffolk)。電車を降りるとそこには立派な駅舎がありました。が、無人駅。1849年に完成したこの建物は賃貸に出されていました。。。
 
 
この町はもともと羊毛の繊維をカーディングする羊毛梳き産業で成長した町。ハイストリートには、かつての繁栄をうかがわせる立派な建物が建ち並び、現在はアンティークショップや可愛らしいユニークなショップがありました。が、町は活気が感じられず、何となく寂しい、重い空気。。。なぜだろう。

 
下は可愛らしいポストオフィス。


トーリィ・コブボールド(Tolly Cobbold)はサフォークを拠点とした元醸造会社だそう。

 
この地名のニーダムは古英語の「Need+ham」に由来し、「貧しい町」を意味するそうです。つまりマーケットのある貧しい町って事?矛盾した印象を受けますが、もともと痩せた土地だったのかも知れません。1245年に市場特権(Market Charter)を与えられ、1660年以前は羊毛梳きが重要な産業として栄えたようですが、貿易は近隣のイプスウィッチ(Ipswich)やストゥマーケット(Stowmarket)に取られちゃった感じですね。
 

更に、1663~1665年には疫病による大打撃を受けました。ニーダムマーケットでペストの強い病原体が見つかり、その広がりを防ぐために町は隔離されたそうなのです。教区の境界線を示すためにチェーンが張られ、町の西にはチェーンブリッジ(Chainbridge)、東にはチェーンハウス・ファーム(Chainhouse Farm)と、チェーンの内部にいる人たちが、食料代としてお金(殺菌するために酢に浸した)を入れるポイントが置かれていたのだとか。今でも、町には「チェーンハウス・ロード(Chainhouse Road)」と「コーズウェイ(Causeway)」という通りがあり、通り名はいずれも疫病に由来するものだそうです。前者は病気の広がりを防ぐために儲けられたチェーンに由来し、後者は「死体の道(コープスウェイ;corpse-way)」が変化したもので、疫病による死者を町から外へ運ぶルートに用いられた道なのだそうだ。このコーズウェイ、隣村(Barking)の教会墓地へと続いていました。私が最初に町で感じた重たい空気はそんな暗い歴史がもたらすものだったのだろうか???
 
コーズウェイ
参照;

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