レイモンド・ブリッグズ;風が吹くとき。

戦争を体験したことはないけれど、まさに『戦争』のような物々しさを感じてます。その一方で、制限はあるものの家の中では普通の暮らしがあります。そしてふと頭に浮かんでくるのが『スノーマン(The Snowman; 1978)』などで知られるレイモンド・ブリッグズ(Raymond Briggs;1934-)の作品『風が吹くとき(When the Wind Blows; 1982)』。これはブロッグス夫妻が核戦争の恐怖に直面する物語を描いたものです。アニメーション映画化もされ、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)が主題歌を担当しました。

これは田舎で暮らす老夫婦の物語です。戦争が勃発し、彼らは政府発行のパンフレットに従い、保存食の用意やシェルターの準備を始めます。やがて核ミサイルが落とされ、シェルターでなんとか命は助かるものの放射線に蝕まれて衰弱していくという悲しい物語です。でも彼らは何も知らないから、最初は楽観的に紅茶を飲んだり普通の日常を過ごすんです。外では戦争が起きているのに、戦争自体は描かれず、家の中で普通の生活を送ろうとする二人の姿を淡々と描いているこの作品。その外と内のギャプというか、緊急事態の中で普通の生活を送るという異様さが、なんだか今の自分たちと重なります。もちろん違う未来が来ることを望んでいますけど。


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