地球。

大地に広がる穏やかな丘。そして、大地を割って流れる川。その土地にはオークやニレ、カバノキ、柳、松等が生い茂る森林が存在し、馬や鹿、オーロックス(ウシ科)、イノシシたちの住みかとなっていた。水草が生えた湿地帯には水鳥やビーバーが、海や湖や川にはたくさんの魚たちが生息していた。そして人間たちもまた、自然の恵みを享受して生活していた。かつて北海に存在した自然豊かなその土地はドッガーランド(Doggerland)と呼ばれている。それは大昔、イギリスが大陸続きだった時代のお話です。

もちろんその地名は後になって名付けられたもの。もともと「ドッガー」は古オランダ語で釣り船を意味したそうなんですが、そんな釣り船が漁業を行った豊かな浅瀬の漁場をドッガー・バンクと呼んだそうです。そしてその領域にかつて存在した土地をドッガー・バンクにちなんで『ドッガーランド』と呼ぶようになったそうなんですね。でもそんな自然に恵まれたドッガーランドはなぜ海の底に消えたのでしょう?その理由は主に『気候変動』、『地震』、『津波』という3つの自然現象に起因していると考えられているようです。簡単に言えば、大昔に氷河期が終わると温暖化が加速し、氷が解けて海面が上昇し、ドッガーランドのほとんどが北海の下に沈んだ。さらにはノルウェー付近の海底で発生した大規模な地滑りにより、5mもの津波がドッガーランドを呑みこみ、生物を一掃してしまった。ドッガーバンクの部分は島として残っていたようですが、海面の上昇やら、暴風・洪水などの侵食により、徐々に年月をかけてドッガーランドの土地は失われてしまったそうです。

自然の力には逆らえない。歴史に「もし」は存在しないけど、ドッガーランドが今も存在していたら歴史は完全に異なっていただろうという記事を読んで、確かに人種も言葉も町も歴史上の出来事も全てに影響したんだろうなぁと思った。現在のヨーロッパの港町は内陸の町のままだったかもしれない。それに、当時、ドッガーランドはヨーロッパで最も豊かな狩猟漁場だったようなので、そこに暮らしていた人々はその土地で高度な文化を創り、発展を遂げていたかもしれない。大陸続きであれば人の往来も異なっていたはず。ローマ軍やヴァイキングのイングランドへの侵入だって結果は違っていたかもしれないですしね。それだけじゃない。アメリカのニューヨーク(New York)は1624年にオランダ人が交易場として築いた町で1664年までニューアムステルダムと呼ばれていたそうですけど、同年イギリスのヨーク公(The Duke of York)が占領して、ニューヨーク(新しいヨーク)と呼ばれるようになったんですよね。ヨーク公の称号っていうのも、かつてヴァイキングが支配したイングランドの都市ヨークに由来している訳ですから、ヴァイキングがヨーヴィック(Jorvik)という首都をそこに築かなければ、ヨークも、そしてニューヨークの地名も変っていたかも知れないという事です。そう考えると世界が大きく変わってしまう。いやいや、そんなこと考えたらいキリがないし、異なるのは当たり前なんですけど、ついつい想像を膨らませちゃいました。でも、そいう過程を経たからこそ私たちが存在していて、かつ、地球は今もずっと変化し続けているんですよね。

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