フロスト・フェア

1309~1814年の間にロンドンのテムズ川(River Thames)は、少なくとも23回凍結したといいます。当時のテムズ川は、私たちが目にするテムズ川とは異なり、もっと広くて浅かった。そして緩やかな流れだったことから、水が凍りやすい条件が揃っていたんですね。さらに、19のアーチの上に構築された古いロンドン・ブリッジの橋脚には、川の流れを分断する「スターリングス(Starlings)」と呼ばれる杭くいがあり、それが更に水の流れを遅くしたようです。特に17世紀初頭から19世紀初頭にかけては、川が最も頻繁に凍った小氷河期として知られています。そのうち少なくとも1683-4年、1716年、1739-40年、1789年、及び1814年の5回は、氷上で『フロスト・フェア(Frost Fair)』が開催されました。1683-4年、テムズ川は2ヶ月間完全に凍り、氷は厚さ11インチ(28cm)に達したそうで、多くの港の使用と輸送に深刻な問題を引き起こしました。

Source; Wikipedia
Frost Fair on the River Thames near the Temple Stairs, detail
1684/Thomas Wyke

前にも同じような記事を書いたことがありますが、今回は当時のフェアで、実際どのようなものが販売されていたのかについて触れたいと思います。フェアというと今でも様々なブースが立ち並び、食べ物から雑貨に至るまで色々なものが売られ人々の目を楽しませてくれていますよね。当時も、様々な商人が商品を販売するためのブースを設置したり、行商人が群衆の中を歩いて回っていたと言います。食べ物としては、ロースト・ビーフ、ロースト・マトン、ブランズウィック・マム、コーヒー、ジン、ジンジャーブレッド、ホット・アップル、オールド・トム・ジン、ホットチョコレート、パール、紅茶、ブラックプディングなどが販売されていたようです。ブランズウィック・マム(Brunswick Mum)は、ドイツの黒ビール、パール(purl)は、ホットビールの一つで、ジン、砂糖、しょうがなどを加えた飲み物だそうです。寒いですから、アルコール類など体が温まりそうなものが多いのが印象的です。目玉は牛の丸焼き。これは調理するのに24時間かかるといい、一頭で800人ものお腹を満たすことができたようです。マトンもスライスしたり、ミンスパイにして販売されていたようです。

1608年のフェアでは、ダンス、サッカー、ナインピンズ・ボウリング(Nine-pin bowling)、ギャンブルなどが行われ、他にも、床屋、果物販売、靴職人も出店していたと言います。
1683-84のフェアでは、サッカー、ナインピンズ・ボウリングの他に、大道芸人のジャグラーや火食い術、アイススケート、人形劇、そり、馬車のレース、狩りのような競技も行われていたようです。

それらの光景、漂っていたであろう匂いや音を想像するだけで、いかにこのフェアが賑わっていたかが分かります。今年はコロナの影響でクリスマス・フェアなど多くのイベントがキャンセルとなってしまいましたが、また近い将来、以前のような賑わいが戻ってくるといいですね。
 

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