たまたまキーラ・ナイトレイ主演の映画『ダッチェス(The Duchess; 2008)/邦題;ある公爵夫人の生涯』を見てました。これは実在したジョージアナ・キャヴェンディッシュ(Georgiana Cavendish (née Spencer), Duchess of Devonshire, 1757-1806)の人生を描いたもの。彼女はイギリス貴族、初代スペンサー伯爵の長女でした。スペンサー家。そう、故ダイアナ妃の祖先にあたる女性です。
かつて日本にも爵位制度がありましたが戦後1947年に廃止されています。イギリスでは今も爵位制度が残されています。ダッチェスは女性の称号であり、『 デューク(Duke)の妻』を指します。一般的に爵位には5段階あるそうで、上から『公爵(デューク;Duke)、侯爵(マークェス;Marquess)、伯爵(アール;Earl)、子爵(ヴァイカウント;Viscount)、男爵(バロン;baron)』の順位となっているようです。因みにウィリアム王子はケンブリッジ公爵(The Duke of Cambridge)、キャサリン妃はケンブリッジ公爵夫人(The Duchess of Cambridge)と呼ばれ、最高ランクの称号を有していますよね。つまり、ジョージアナは伯爵家生まれ。公爵家へ2段階ステップアップの玉の輿婚をした女性だったんですね。まぁ、一般庶民には縁もゆかりもない遠い世界の話ですけど。。。
この映画は、最も裕福な名門貴族の一人、デヴォンシャー公爵に嫁いだジョージアナのお話なんですけど、一言で言うと最初からそこに愛がなかったんですね。公爵25歳、ジョージアナ16歳。公爵がジョージアナに望むのは男子の後継者のみ。後継ぎを産むための存在でしかなかった。しかも公爵がメイドに産ませた女児の養育までさせられます。結局、何度か流産を経験しつつ2人の女の子を出産。一方で、公爵は事も有ろうかジョージアナの親友エリザベス・フォスターと長年不倫を続け、同居するという複雑で屈辱的な三角関係が続くんですね。そんな中、ジョージアナはようやく男子を出産し、義務を果たしたのだから自由にさせてと言わんばかりに第2代グレイ伯爵チャールズ・グレイとの恋にのめり込みます。とはいえ公爵家という立場上、自由な恋愛も許されず、グレイの子供を出産するも、子供はグレイ家に引き渡されて破局。泣く泣く公爵家に戻り、妙な三角関係のまま生涯を過ごすことになるのです。まさにこんな状態を「籠の中の鳥」と言うのかも? と思った。なんか八方ふさがりで窒息しそう。。でもジョージアナは美人で社交的、政治活動にも身を投じ、ギャンブル好きな女性だったそうです。その姿が何となくマリー・アントワネットと重なりました。裕福な暮らしの中に愛がないと、破滅的な方向へと走ってしまうものなのかも。
それでもジョージアナだけが哀れとは思えないんですよね。ヘンリー8世にも見てとれるように、公爵にしたら5代目と言うこともあり、後継ぎというプレッシャーは相当なものだったに違いないとも思うんです。どうしてジョージアナをそこまで愛せなかったのかはわかりませんけど、ここで血筋を途絶えさせる訳にはいかんぞ。男子を産むまで許さんぞみたいな使命感を持っていたと思います。エリザベスにしてもそう。親友の旦那と不倫といっても現代とは異なり、彼女も弱い立場の女性。子供たちに会うためには、親友を裏切り傷付けてでもそうするしか方法がなかったという苦しい親心もあったんです。だから他の面ではジョージアナを支え続けた。そして、ジョージアナが唯一愛したチャールズ・グレイは、男爵の一人娘と結婚し10男6女をもうけ、後に首相(在職1830-1834年)に就任しています。やっぱり本人たちだけではどうにもならない恋愛ってありますよね。因みに彼は紅茶好きとしても知られ、アールグレイは彼にちなんで付けられた名前なのだとか。
いずれにしても、全てはそういう時代に彼らが生きていたということ。ジョージアナは幾度かグレイ家に引き取られた娘に会うことが出来たそうですが、1806年に48歳で亡くなっています。その時彼女はひどく借金まみれの状態だったのだとか。そして彼女の死後、公爵とエリザベスは結婚しています。
下は社交界の華として人気を集めていた頃、
トマス・ゲインズバラ(Thomas Gainsborough)に描かせたジョージアナの肖像画(1787年制作)だそうです。実はこの絵、ロンドン・ナショナル・ギャラリーから盗まれ、しばらく姿を消していたそうですが、再び発見され、最終的に第11代デヴォンシャー公爵が落札して公爵家に戻ったものそうだ。
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Source; Wikipedia Lady Georgiana Cavendish by Thomas Gainsborough |
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