出生の秘密。

キング・アーサー(King Arthur)は、5世紀後半から6世紀初めのブリトン人の君主とされる人物ですが、はたして実在したのだろうか?時代が時代なだけに、彼の存在を証明するような信頼できる史料に乏しく、モデルにしたであろう人物はいたようだけど、そのほとんどは民間伝承や創作によるものとも言われています。だけど「火の無い所に煙は立たぬ」ということわざを借りれば、根拠もなくそういう伝説・人物像が確立されることは無いんじゃない?と思いたかったり、実在していればいいのになと素人の私は思ったりもする。そのほうがロマンがあるし(笑)。

物語上のアーサー王には出生の秘密がある。その話はもうおとぎ話の世界なんですね。それはアーサーの父ユーサー・ペンドラゴン(Uther Pendragon)が敵国の美しい王妃イグレイン(Igraine)に恋したことに始まります。何としてでも彼女を手に入れたかった彼は、奪うためにコーンウォールに攻め入り、「魔法の力」を借りて敵国王の姿に化けて寝とってしまうんです。まるでシンデレラのビビデ・バビデ・ブーと一緒。カボチャが馬車に、ネズミが馬に化けたようなものです。そこでできちゃったのがアーサーと言う訳です。パパ、何やってんの?と思いたくなる。。。古い作品ではアーサーが正当なユーサーの後継者とされているそうですが、後の作品では婚前に生まれた庶子、つまり、正室ではない女性から生まれた子として扱われているそうです。何せイグレインは夫だと思って寝たわけですから。だからアーサーには王になる資格がなかったのです。結局、敵国王はその戦いで戦死したため、ユーサーとイグレーヌはその後結婚したそうです。当時は略奪婚など珍しくなく、勝者は姫を奪うことが許されていたのだとか。中には従った人もいれば、拒絶して死を選んだ人もいたでしょうね。その辺のイグレーヌの心情は分かりませんけど。。。

そんなわけで、アーサーは庶子としてマイナーな貴族に預けられ、何も知らず騎士として教育を受けるのです。そしてユーサーの死後、後継者がいないということで、かの有名な「これを引き抜いた者は王となるだろう」という、台座に刺さった剣の話につながっていく訳ですね。誰も台座から引き抜けなかった剣を、アーサーがするりと引き抜くことで、神に選ばれた王としての地位が印象付けられました。もちろんアーサーが王となることに反対したした人も多かったようですが。。。

個人的にはアーサーはきっとイケメンで、賢明、かつ威厳があり、勇敢な英雄のようなイメージなんですけど、恋愛に関してはなんだか奥手な感じがするんです。妻にめとったグィネヴィアは、円卓の騎士で一番のイケメン騎士、ランスロットと不倫しちゃうしね。非現実的な世界に描かれていながら、完璧な王ではなく、弱さというかちょいと抜けた感じがあって、より人間味が感じられるかなとも思うのです。

King Arthur by Charles Ernest Butler (1903)

さて、こちらは以前セールになっていて購入したテームズ・アンド・ハドソン社(Thames and Hudson)の「キング・アーサー」に関するフルカラーの解説本です。今になって役に立っています。

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