ヨークシャー・プディングを焼く。
今回はヨークシャー・プディング(Yorkshire pudding)を焼いてみました。ヨークシャー・プディングとはローストビーフなど肉料理の付け合わせとしてよく用いられるもので、グレイビーソースなどをかけて頂きます。サンデーローストに登場する定番のパブ料理でもあり、その食感は実にしっとりしたシュークリームの皮に似ています。
ヨークシャー・プディングの正確な起源は不明だそうで、今では全国的に使われていますが、一般的にはイングランド北部に関連する料理と捉えられているようです。これはかつて、貧しい家庭では肉料理はコストがかかるので量を減らし、その分かさ増ししてお腹を満たすために生まれた風習ともいわれています。すいとんのようなダンプリング(dumplings)と呼ばれるものも「かさ増し」という同様の概念から生まれたものです。確かに材料は小麦粉・卵・牛乳に塩少々のみで出来ちゃう簡単な付け合わせなんです。
18世紀以前、イギリスでは肉ベースのソーセージみたいな食べ物を「プディング」と言っていたんですね。実際には、容器や布、腸などで蒸したものをプディングと呼ぶようです。ブラック・プディング、ホワイト・プディング、ハギスなんかがそうですね。じゃぁ、焼いてるヨークシャー・プディングはどうなのよという話です。分かりません。分かりませんが、かつては暖炉で肉がローストされる下で焼かれ、滴り落ちる肉汁を一滴も無駄にせず、しみ込ませていたため「ドリッピング・プディング(Dripping Pudding)」とも呼ばれていたそうです。特にイングランド北部では、肉の入手が困難な時に、一滴の肉汁さえも大切にし、脂肪を摂取していたんですね。最も初期のヨークシャー・プディングのレシピで知られているのが、『トード・イン・ザ・ホール(Toad in the hole)』という料理。「穴の中のひきがえる」という意味です。なんとも食欲が失せるような不気味な名前ですけど、もちろんカエル料理ではありません。ヨークシャー・プディングの生地を応用した料理で、生地を流し込んだ中にイギリスのフニャッとしたソーセージを入れて焼いたものです。もともとはソーセージではなくお肉が使われていたようで、かつてはバッター・プディング(Batter Pudding)とも呼ばれていたそうです。衣生地(Batter)からのぞいたソーセージの姿が巣穴から獲物を狙うカエルみたいだから等、諸説あるようですが、このネーミングの由来は不明です。今回使用したのはマフィン型。近年はそれが一般的ですが、伝統的なヨークシャー・プディングは、大きな型で焼き上げられ、適当な大きさに切り分けられていたそうです。焼き上がりはふわっと膨れるんですが、さめると凹型にしぼんじゃうんですよね。今回はヨークシャー・プディングにラム肉の煮込みを添えて頂きましたました。まだ作ったことがないけど、なんだかすごく簡単そうだから今度『トード・イン・ザ・ホール』焼いてみようかな。
因みに、前にも書きましたが1666年にロンドン大火が始まったベーカリーのあった通りも『プディング・レーン(Pudding Lane)』として知られています。参照;
- https://www.historic-uk.com/CultureUK/Yorkshire-Pudding/
- https://britishfoodhistory.com/2011/11/15/what-is-a-pudding/
- https://en.wikipedia.org/wiki/Toad_in_the_hole
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