ヴィロコニアム

ロクセター(Wroxeter, Shropshire)の村にある『ヴィロコニアム・コノヴィオラム(Viroconium Cornoviorum)』というローマ遺跡に行ってきました。当日のお天気予報は雨。ミュージアムがあるしいいんじゃない?と旦那はんが言うので、てっきり屋内展示なのかなと思っていたら、展示&お土産コーナー以外、思いっきり吹きざらしじゃないかい!!当然と言えば当然か。。。幸い、雨はぱらつく程度でほとんど降りませんでしたが、強風で寒いのなんの。。。


でも私、古代史好きなので興味津々。ここはかつて、ローマ時代のブリテンにおいて、ロンディニウム(Londinium/ ロンドン; London)、ヴェルラミウム(Verulamium/ セント・オルバンス; St Albans)、コリニウム(Corinium/ サイレンセスター; Cirencester)に次いで4番目に大きな都市だったことがあると言われています。ローマ時代はアクア・スリス(Aquae Sulis)と呼ばれ、Bath(お風呂)という言葉の語源になったバースは、温泉の町として栄えた事は知られていますよね。私は行ったことないんですけど、ここ、ヴィロコニアムにもローマ式公衆浴場があったそうなのです。

大きな遺跡が目に飛び込んできました。この赤土の向こう側には、かつて下図のようなバシリカ(basilica; 回廊の様な長方形の建物)があったとされています。イラストを見てもあまりに巨大過ぎて想像が追いつかない。。。古代なのに近未来みたい。



ここで一番目を引くこの壁跡はオールド・ワーク(the Old Work)と呼ばれていて、高さ7mあるそうです。よく見ると2色のタイルを用いて縞模様になっていました。小さな穴は建設時に足場として木材を差した穴。こちら側から見ると、上部に3つのアーチがあり、失われた屋根の形状を示しているそうです。壁の向こう側にあったバシリカを通り、この入口から公衆浴場(手前)へと入ってきた訳です。



先にポコポコ見えるのは、床を支えたハイポコースト(hypocaust)と呼ばれる柱。つまり高床にして床下に空間を作り、炉で炊かれた熱気を通して室内を温めていたのですね。セントラルヒーティングの先駆けみたい。入浴者は体にオイルを塗り、この先のテピダリウム(tepidarium)と呼ばれる微温室、そしてさらに奥のカルダリウム(caldarium)と呼ばれる熱く蒸し暑い浴室へと進んだそうです。1859年に撮影された写真をみたら、昔はもっと多くのハイポコーストが残されていたようですが。
 

そして、下はフォルム(forum; 公共広場)があったところ。市場、役所、裁判所などの機能を組み合わせた重要な建物もあったそうです。調査の結果、AD170年頃にフォルムで火災があったことが確認されているのだとか。手前にコロネードと呼ばれる列柱跡が見えます。窪んだ位置にあるのは、これが当時の地面の高さだったことを示している訳ですね。黄色っぽい建物は2010年に古代の道具と材料だけを用いて再建された住宅(villa urbana) だそうで、中はお店やベッドルーム、ダイニングルーム、お風呂などに別れ、展示してありました。

 
手前(写真下)はお店があった場所。ピープー冷たい風が吹き抜ける遺跡に立って、むかーし昔の都市の様子を想像してみます。今はがらんとした空間。当時の賑わいを想像するのは難しいですけど、ミュージアムに展示されている出土品などを見たり、ここに公衆浴場、マーケット、住宅や役所などの巨大な建築物があったことを想像すると、その規模だけでなく、その時代に仕事、お店、食料や寝床を含め、生活を支える都市機能が整っていたということに驚かされるのです。ロンドンやコルチェスターなどは、古代都市の上に現在の都市が存在しているので、ここヴィロコニアムのような遺跡を見ることが出来たのは貴重だったと思う。


因みに、この遺跡近くにあるセント・アンドリュー教会(St. Andrew's Church)では、建設時にここのローマ時代の石材を再利用しているそうですよ。今日はざっくりヴィロコニアムのお話しでした。全体像も無く、かいつまんで紹介しているので、おそらく位置関係は分からないと思いますが、興味がある方はイングリッシュ・ヘリテージのウェブサイトをどうぞ。空中写真や都市全体の想像図なども見ることが出来ますよ。

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