ルーフ・ボス

前回、ロンドンのサザーク大聖堂(Southwark Cathedral)を訪れた時に見掛けたこれらは、『ルーフ・ボス(roof boss)』あるいは『セイリング・ボス(ceiling boss)』と呼ばれる装飾突起だそうです。最初、このようにディスプレイされていたので何なのかよく分かりませんでしたが、よくよく読んでみたら通常は天井にはめ込まれている装飾突起でした。
 

 
建築では石材や木材でできた突出している要石を『ボス(boss)』と呼ぶそうで、特に天井や『リブ・ヴォールト(rib vault)』と呼ばれる肋骨状のアーチ型天井の交点にみられます。いやいや、文章を読むよりも教会の写真を見た方が早いって。ああこれねって思うはず。下の写真はノリッジ大聖堂(Norwich Cathedral)のクロイスター(Cloister)と呼ばれる屋根付き回廊に見られるボスと大聖堂内の天井。アーチのラインが交流したとこにあるポコポコした突起がボスです。ロマネスク様式のノリッジ大聖堂には、世界で最も多くの塗装された石のボスが残されているのだとか。今度じっくり見てみよう。
 

 

ゴシック建築に見られるルーフ・ボスには、葉、紋章などの装飾が複雑に刻まれているそうです。その多くは動物、鳥、人物や顔を特徴としたもので、どちらかというとグリーン・マン(Green man)に見られるような奇怪なものが多い。元々は非常にシンプルだったそうですが、中世を経て徐々に大きく、そしてより精巧な装飾へと変化していったようです。
 
さて、私がサザーク大聖堂で見掛けたルーフ・ボスたち。ここはかつて(1106~1538年)、サザーク小修道院(Southwark Priory)というアウグスティノ会の教会だった時代があるそうですが、その頃の1469年に修道院教会の屋根が崩れ、石造りの丸天井が彫刻の施された木製天井に置き換えられたのだそうです。つまりこれらのルーフ・ボスはその天井にはめ込まれてあったものだったんですね。中でも、この何かを企むかのように指をくわえて不気味に笑うボスは、聖書のユダ(Judas Iscariot)を飲み込む悪魔を示しているそうです。ユダというのはイエス・キリストの弟子でありながら、イエスを裏切ったとされる人物ですね。聖書、ルカの福音書22章3節には「さて、十二弟子のひとりで、イスカリオテと呼ばれるユダに、サタンが入った。」とあるそうです。イエス様を売って金をもらおうと、悪の心が生まれた瞬間なんでしょうか。この表情、何とも言えない。。。

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