アウター・ヘブリディーズのマーメイド伝説。

アウター・ヘブリディーズ(Outer Hebrides)とは、スコットランド北西沖の大西洋にある大小119の島々が連なる列島を指し、19世紀、その島々に住む多くの人々はマーメイドの存在を信じていたと言います。

1830 年、ベンベキュラ島(the Island of Benbecula)の西海岸で、農夫たちが海藻を切っていると、一人の女性が水中でミニチュアの女性のような生き物を見つけました。彼女は他の者に呼びかけ、男性たちはその生き物を捕えようと水中にもぐりました。少年が逃げ惑う生き物に岩を投げつけると背中に命中しました。そして、その生き物は痛みに叫びながら、波の下に姿を消してしまいました。

数日後、ナントン(Nunton)という港町近くのカル湾(Culle Bay)の浜辺に一体の生物の死体が打ち上げられました。当時のある記述は次のように述べています。「上半身は栄養の取れた3~4歳の子供のようだが、乳房は異常に発達していた。髪は長くて黒く艶やかで、肌は白く柔らかかった。下半身は鮭のようだが鱗はなかった」。

噂が広まると、当然ながら大勢の人々がこの謎の生き物を一目見ようとビーチに集まり、その誰もがマーメイドの体であると意見が一致しました。地元保安官は生き物を見ると、埋葬布と棺を用意させ、近くの教会の墓地に埋葬しました。その最大規模な葬儀には多くの参列者が集まり、キリスト教徒の埋葬と同様に行われたと言われています。

ところがこの事件に関する墓標は一切見当たらず、教会ではなく砂丘近くに埋葬されたのだという話も出てくる始末。実際に湾の南端近くにある大きな石が人魚の墓ではないかと疑われて調査も行われましたが、決定的な証拠も出ずに結論に至ることはなかったそうです。そのため、ヘブリディーズのマーメイドが眠る場所は謎のまま。創作だったのでは?と疑ってしまいますが、本当に大勢の人々が目撃しているのであれば真実として伝わったものなのかなぁと思ったりもします。真相は分かりませんがこれがアウター・ヘブリディーズに伝わるマーメイド伝説です。何の痕跡も残されていませんが、19 世紀半ばにこのマーメイド伝説は人々を島へ呼び込むための観光資源にもなったようです。

この他にもアウター・ヘブリディーズには、マーピープル(Merpeople)、ケルピー(Kelpies)、ミンチ族の青い男たち(Blue men of the Minch /Storm Kelpies)、ショーネイ(Seonaidh ;Shoney)といった水の精霊、海の生物たちのお話もあります。全て調べた訳ではありませんが、やはりこの地域は独特のお話が多いですね。

その他アウター・ヘブリディーズの関連記事;

Source; Wikipedia
By John William Waterhouse - Art UK, Public Domain,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7715772

コメント