タイ・ザ・ノット
スコットランド独立のために戦った実在の英雄ウィリアム・ウォレス(William Wallace)。そんな彼の生涯を描いた映画『ブレイブハート(Braveheart; 1995)』の中で、幼馴染のミューロンと森の中でこっそり結婚式を挙げるシーンがあります。シンプルだけど素敵だなと思う。その時に行われている儀式が、新郎新婦の手と手を一つに結ぶ『ハンドファスティング(Handfasting)』と呼ばれるものです。『ハンドファスト』という動詞には古くから「正式に約束する、契約を結ぶ」という意味があり、新郎新婦の手に布の結び目を結ぶことによって夫婦を結びつける。2つが一つとなる。ということを表しているんですね。これは古代ケルトの時代にまでさかのぼる古い異教の習慣だそうです。結婚(Marriage)することを意味する『タイ・ザ・ノット(tie the knot) 』というフレーズもありますが、これも結び目を作るという意味があり「ハンドファスティング」に由来していたようです。おそらく、政治やビジネスなどで契約が成立した時に手と手を握り合うというのも、こういう理由があったのかなと思います。日本でも「縁結び」などの表現があるから想像しやすいですね。
以前、「ケルティック・ノット」でも紹介したように、ケルトの結び目模様には「永遠」や「魂の循環」などの意味が込められています。また、日本にも主に祝儀の際などに用いられる「水引」と呼ばれる飾り紐がありますよね。水引にも「未開封であるという封印のしるし、魔除、人と人を結び付ける」という意味あいがあるそうです。もちろん日本やイギリスに限ったものではありませんが、このように『結び・ノット』というものは、深く根差した文化や人間の繋がりに古くから関係していることが分かります。
さて、イギリスの中世には、結婚が禁じられていた日がありました。それは「降臨節・待降節(Advent)」、「レント・四旬節(Lent)」、「祈願節(Rogationtide)」、そして主な聖なる日など。さらに、8月は収穫で忙しいし。。などの時期も加味すると、結婚できる日というのはトータルで年間の半分位しかなかったのだとか。意外と結婚式の日取りにも縛りがあったんですね。
参照;
- Wikipedia
- England's Forgotten Past, Richard Tames, Thames & Hudson
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