ゲシュタルト崩壊。
以前、日本へ帰国した際にペン字練習帳なるものを買ってみた。小・中学と書道を習っていたけど、自分の字は癖があるなと思っていたので、何となく本屋で見つけてやってみようと思ったんです。ひらがなをなぞって練習するのは小学生以来。懐かしいなぁと思いながらやっていたのですが、『あああああ』、『いいいいい』と、形に気を付けながら同じ文字を書いていると、「なんだこの字は。こんな字あったっけ?」と思えてくるのです。『い』とか『ふ』とか点が離れていることが妙に思えてくる。『む』とか『ね』とか『ぬ』とか、くるんと回っていることが変に思えてくる。不思議。
前にも同じような感覚を覚えたことはあったけど、調べてみると、そういう現象を『ゲシュタルト崩壊(独: Gestaltzerfall )』と言うのだそうだ。ドイツ語で「Gestalt(形態)」と「fall(崩れる、バラバラになる)」が組み合わさった『ゲシュタルト崩壊』は、知覚における現象のひとつで、 全体性を持ったまとまりのある構造から全体性が失われ、構成部分をバラバラに切り離して個々に認識し直されてしまう現象をいうらしい。だから、一つを注視しているとパーツごとにばらけて見え始め、ひとかたまりの文字として認識することが難しくなったり、よく知っているはずの文字の形に疑問をもち始めたりするというのです。確かに「言葉」を書いていた時は平気だったのに、「同じ文字」だけを書き続けていた時に、ひらがなが不思議な暗号文字のように思えてきました。
書道教室では難しかったけど、小筆ですらりすらりと書くかな書道が好きでした。漢字を簡略化し,くずして生み出された日本独特のひらがなって、はねたり流したり、やっぱり形がとても美しいなと思うのです。そういや祖父も書道が好きだったな。
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