グリム童話を読む。

子供の頃に読んだ『グリム童話』。一時期「本当は恐ろしい」という事で話題にもなりましたが、今回、デビッド・ホックニー(David Hockney; 1937-)氏のイラストとグリム童話6作品が収められたこの本を読みました。デビッド・ホックニー氏はイギリスの画家、版画家、写真家などとして知られ、国内では20世紀最も影響力のある芸術家の一人と考えられている人物です。この本は英国王立芸術アカデミー(the British Royal Academy of Arts )から1970年に出版され、2012年に再発行されたもので、ホックニー氏の奇妙で素晴らしい絵が収録されています。わずか6作品ながら、私が知っていた童話は『ラプンツェル(Rapunzel)』のみ。他に『The Little Sea Hare(あめふらし)』、『Fundevogel(めっけ鳥)』、『The Boy Who Left Home to Learn Fear(こわがることを学びに旅へ出た少年)』、『Old Rinkrank(リンクランクじいさん)』、『Rumpelstilzchen(ルンペルシュティルツヒェン』がありました。


子どもの頃、赤ずきんやヘンゼルとグレーテル、シンデレラ、ブレーメンの音楽隊、白雪姫、黄金のがちょうなどグリム童話を読みました。あとはディズニー映画などで見たくらい。だから気が付けばほとんど読んでいなかったんですね。子ども心に、ヘンゼルとグレーテルのお菓子の家には惹かれましたけど、ストーリー自体はなんだか不気味で気味が悪いと思っていました。改めてグリム童話を読んでみると、恐ろしいというか、「子どもを煮る」とか「足を切る」など表現がストレートで、残酷な描写のある物語なんですね。というのも、もともとはグリム兄弟が民間伝承をまとめたもので、子ども向けのおとぎ話として作られたわけではなかったから。ヘンゼルとグレーテルに限っては、大飢饉の歴史を伝えるもので、飢饉で困り果てた親が口減らしのために子どもを捨てた話という説もあります。そう言えば日本にも「姥捨て山」という似たようなお話がありましたね。岩手県遠野へ行った時、デンデラ野という、同様に老人を捨てた場所を見たことを思い出しました。

遠野・デンデラ野

子ども向けグリム童話は、もちろん怖い表現を省き、やんわり書き替えられたもの。ディズニーに限っては、いつか白馬に乗った王子様が迎えに来てくれる的な夢のある作品になってますよね。今回、ホックニー氏のこの本を読んで、ラプンツェルが野菜の名前だったことも初めて知りました。そしてお話の最後にラプンツェルが産んだ双子の子どもと暮らしていたという一文から、なーんだ。逢瀬の際にやることやってたんだと思えてしまう、ちょっと生々しい一面が逆に可笑しかった。それでも初版とは違う内容のようですけどね。ホックニー氏の奇妙なイラストのせいか、ちょっと独特な世界のグリム童話でした。

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