姿を消した川。
ロンドンの通りの下にはいくつもの川や運河が埋もれているのは知られています。最もよく知られている川の一つがフリート川(River Fleet)。「フリート」とは、古アングロ・サクソン語で「河口、湾、入り江」を意味する『flēot』という言葉に由来するそうです。ローマ時代には、河口にタイド・ミルを有した主要な川として使用されていたことも知られているそうです。フリート川とテムズ川との合流地点はかつて巨大な沼地だったといいます。のちに都市人口が増加すると川はオープン下水道として使用されるようになり、肉屋が死んだ動物の骨を川に投げ込んだり、人間の排泄物などで悪臭が漂うようになりました。1357年にはテムズ川やフリート川への廃棄物の投棄を禁じ、違反者は投獄となりましたが、完全な解決策とはならなかったようです。実際、その地域では地価が下がり、スラム住居、犯罪、病気などが蔓延したといいます。チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens)の長編小説『オリバー・ツイスト(Oliver Twist; 1837-39)』でも、登場する窃盗団の頭:ファギンの隠れ家がフリート川に隣接するサフラン・ヒル(Saffron Hill)にあると設定されています。そこは「オリバーがかつて見たこともない程に汚く悲惨な場所で、通りは非常に狭く、泥だらけで、不快な臭気が漂っていた」と描かれています。場所の設定の裏には実際にそういう背景があったんですね。ちなみにサフラン・ヒルという通りは今も実在しています。
1710年に『ガリヴァー旅行記( Gulliver's Travels)』の著者で知られるジョナサン・スウィフト(Jonathan Swift)も、詩の中でフリート川の様子について言及しています。
想像しただけでもおぞましいですね。。。さぞかしキツイ悪臭だったことでしょう。フリート川はこのような汚染により川の流れが大幅に減少し、最終的に下水道に組み込まれてしまいました。フリートの他にも、エフラ(The River Effra)、タイバーン(River Tyburn)、ウォルブルック(River Walbrook)、ウェストボーン(River Westbourne)、ネッキンガー(River Neckinger)、 ヒースウォール(Heathwall)等、他にも多くの川が地下へと姿を消しています。下水道と言うと私はヴィクトル・ユーゴー(Victor Hugo)の『レ・ミゼラブル(Les Misérables)』で、ヴァルジャンがマリウスを背負って逃げ込んだパリの下水道を想像してしまいます。あそこも糞尿で汚染されていたのだから、同じようなイメージなのかも知れません。自然の川が下水になって姿を消すというのはちょっと残念な気もしますけど、人口が増える、建物の数が増える、衛生面が改善されるということはある意味こういう事でもあるんですね。当時の人々は環境について深く考えていなかったはず。リサイクルできるともてはやされたペットボトルだって、今では環境汚染問題となってるくらいだし。自然とのバランス、自然共存。それがすごく難しく思えます。それでも、私たちは自然から恩恵を得て生きている訳だから、もっと自然を大切にしなきゃいけない。
Source; Wikipedia The Fleet River (Ditch) in London, in 1844, shown from the rear of the Red Lion Tavern before its demolition. Old and New London: Volume 2. Walter Thornbury, 1878 |
1710年に『ガリヴァー旅行記( Gulliver's Travels)』の著者で知られるジョナサン・スウィフト(Jonathan Swift)も、詩の中でフリート川の様子について言及しています。
肉屋からの掃き出されるゴミ、糞、内臓や血
溺れた子犬、腐った魚、全てが泥まみれ
死んだ猫やカブの頭がその中を転がり流れていく
Sweepings from Butchers Stalls, Dung, Guts and Blood,
Drown'd Puppies, stinking Sprats, all drench'd in Mud,
Dead Cats and Turnip-Tops come tumbling down the Flood
溺れた子犬、腐った魚、全てが泥まみれ
死んだ猫やカブの頭がその中を転がり流れていく
Sweepings from Butchers Stalls, Dung, Guts and Blood,
Drown'd Puppies, stinking Sprats, all drench'd in Mud,
Dead Cats and Turnip-Tops come tumbling down the Flood
想像しただけでもおぞましいですね。。。さぞかしキツイ悪臭だったことでしょう。フリート川はこのような汚染により川の流れが大幅に減少し、最終的に下水道に組み込まれてしまいました。フリートの他にも、エフラ(The River Effra)、タイバーン(River Tyburn)、ウォルブルック(River Walbrook)、ウェストボーン(River Westbourne)、ネッキンガー(River Neckinger)、 ヒースウォール(Heathwall)等、他にも多くの川が地下へと姿を消しています。下水道と言うと私はヴィクトル・ユーゴー(Victor Hugo)の『レ・ミゼラブル(Les Misérables)』で、ヴァルジャンがマリウスを背負って逃げ込んだパリの下水道を想像してしまいます。あそこも糞尿で汚染されていたのだから、同じようなイメージなのかも知れません。自然の川が下水になって姿を消すというのはちょっと残念な気もしますけど、人口が増える、建物の数が増える、衛生面が改善されるということはある意味こういう事でもあるんですね。当時の人々は環境について深く考えていなかったはず。リサイクルできるともてはやされたペットボトルだって、今では環境汚染問題となってるくらいだし。自然とのバランス、自然共存。それがすごく難しく思えます。それでも、私たちは自然から恩恵を得て生きている訳だから、もっと自然を大切にしなきゃいけない。
さて、これらロンドンの失われた川の痕跡は今日でも残っていたり、通常時であればルートをたどるツアーもあるようです。
Source: londonist.com
A modern map by David Western showing the Battersea area in 1840.
The Heathwall can be seen to the bottom and right of the map.
参照;
- https://historyandsocialaction.blogspot.com/2019/08/heathwall-st-was-one-of-stopping-points.html
- https://www.londonslostrivers.com/river-fleet.html
- https://www.bbc.co.uk/news/uk-england-london-29551351
- https://www.telegraph.co.uk/travel/destinations/europe/united-kingdom/england/london/articles/london-lost-underground-rivers-hidden-history/
- https://londonist.com/london/books-and-poetry/lost-rivers-heathwall-battersea
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