シェークスピア語録-Ladybird

テントウムシは漢字で「天道虫」、お天道様(太陽)に向かって飛んで行くところから名付けられたそうです。英語では「レディーバード(Ladybird)」。学名の『コッチネッリデ(Coccinellidae)』はラテン語で「緋色」を意味する「coccineus」に由来するそうです。

さて、エリザベス朝時代、多くのありふれた生き物に、神聖なものを関連させて名前が付けられていたそうで、例えばイギリスではテントウムシが「我々の聖母の鳥(Our Lady’s Bird)」として知られるようになりました。これらはヨーロッパ言語においても共有しているものがあるそうです。ここでいう聖母とはもちろん聖母マリア(the Virgin Mary)を指しており、初期の絵画でよく赤い外套を着て描かれていたこと、さらには、イギリスでいう一般的なテントウムシには斑点が7つあることから、7つの斑点は聖母の 7 つの喜びと 7 つの悲しみを象徴すると言われています。

実は現在の「レディーバード」という単語は、シェークスピアが『Our Lady’s Bird』を短くしたのが始まりと言われています。それはロミオとジュリエット(Romeo and Juliet, Act I, Scene III)の中で、乳母がジュリエットを探している場面で見ることが出来ます。ジュリエットのことを子羊ちゃんとかテントウムシとか呼んでいる訳です。
NURSE: Now, by my maidenhead, at twelve year old, I bade her come. What, lamb! what, ladybird! God forbid! Where’s this girl? What, Juliet! 
ですが、ここでいう「レディーバード」は、おそらく「テントウムシ」を指しているわけではないと考えられています。 シェイクスピアの時代、レディーバードは性的軽蔑的なスラングだったと考えられているようなのです。セリフの中で、乳母がレディーバードと口にしたのちに、『God forbid!』と言っています。これは「とんでもない」とか「そんなことは断じてない」という意味で、二通りの解釈ができるといいます。ひとつは、ジュリエットがいないことでまさか身に何か起こったのではと案じて心配する気持ちを自ら打ち消す言葉。もう一つは、「テントウムシ」がスラングであったことから、両親の前でうっかりジュリエットに対し性的軽蔑的な言葉を口にしてしまったことに当惑した表現とも捉えられています。奥深いですね。。。

参照;

コメント