シェークスピア語録-Cold Blooded

英国史上最も悪評の高いイングランド王ジョン(在位1199-1216)。実際、ジョン王(John; 1166-1216)は無能・暴虐・陰謀好き・裏切り者・恥知らずとされ、イングランド史上最悪の君主と評されきました。その人気のなさから、これまでジョンの名を継承した王はおらず、「ジョン2世」が存在していないのも事実です。彼は末息子で、幼いころから継承できる土地が与えられなかったため、初めは冗談で「失地王(John Lackland)」というあだ名が付けられていました。ところが兄たちが若くして亡くなり、ジョンが父親の帝国を継承すると、ことごとく戦いに敗れて、そのほとんどの土地を失ってしまったため、そのあだ名が現実のものとなってしまったという不名誉な王様だったのです。そんな彼を描いたシェークスピアの『ジョン王の生と死(The Life and Death of King John; Act3, Scene1)』という歴史劇の中で、コンスタンスのセリフに「cold-blooded(冷血)」という言葉が初めて(1595年)登場しました。今では「温情に欠けた、心の冷たい、薄情な」人を指す言葉ですね。
Constance; ...Thou cold-blooded slave, hast thou not spoke like thunder on my side, been sworn my soldier, bidding me depend upon thy stars, thy fortune and thy strength, and dost thou now fall over to my foes? 

実は、もともとは外部の温度により体温が変化する変温動物「魚や爬虫類」を説明する生物学的な意味のみで使用されていた用語だそうです。感情とは全く関係なかったものの、感情的に冷たい「人」を表現する新たな方法として初めて使用したのがシェークスピアでした。それ以来、殺人者、吸血鬼、連続殺人犯など、感情を持たない人や生き物を表す一般的な用語となりました。シェイクスピアの言葉のチョイスが面白い。

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