レオナルド・ダ・ヴィンチのノート。

レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci; 1452-1519)は、イタリア・ルネッサンス建築家、音楽家、発明家、エンジニア、彫刻家、画家等々、多様な才能を持った人物というのは広く知られていますよね。ちなみに「ダ・ヴィンチ」とはヴィンチ村出身の意味。

かつて、ルーブル美術館(Louvre Museum)で、レオナルドが16世紀に描いたとされる『モナ・リザ(Mona Lisa,)』を初めて見た時、想像以上にサイズが小さくてビックリしたのを覚えています。とにかく人混みがすごくて、ゆっくり見れなかったのは残念ですけど。でも気が付けば、彼の作品を意外と多く見ているんですね。例えば、ミラノにあるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院(Chiesa di Santa Maria delle Grazie)にて、彼の作品の一つ『最後の晩餐(L'Ultima Cena)』を見れたことは凄く幸せでした。本や映像でしか見たことのなかった有名な作品を目の前にして、大袈裟かもしれないけど、本当に自分がその場所にいるのが信じられないくらい感動しました。閲覧時間は15分で一度に入れる人数も限られていましたが、幸いなことに定員人数に満たない状態で入れたので、ゆったり、さらなる静けさと照明との独特の雰囲気の中で、しっかりと目に焼き付けてきました。今でもいい思い出です。

Leonardo da Vinci, Milano Italy

その他にも美術館などで彼の作品を目にしましたが、中でも印象的だったのは、ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)で見た彼のノートです。以前V&Aへ行った時、何気に彼のノートが展示されているのを発見しました。小さなノート(縦102mm、幅82mm、厚さ34mm)だったのですが、余りにひっそりと展示されていて、タイトルを見て驚きました。『モナ・リザ』のような人だかりすらない、私が行ったときは周りに誰もいませんでした。まぁ、V&Aの展示物自体、凄いものが何気に展示されている感じはありますけどね。のちのち調べてみると、レオナルドが興味と関心を持ったあらゆる分野の事象を書いた様々な手稿の一つで、彼の死後に散逸しており、現在ではウィンザー城のロイヤル・コレクション、ルーヴル美術館、スペイン国立図書館、ヴィクトリア&アルバート博物館などに所蔵されているのだそうだ。


このV&Aに展示されているフォースター手稿(Codex Forster)と呼ばれるこのノートブックは、15世紀後半~16世紀初頭にレオナルドによって書かれたノートをまとめて3巻セットにしたうちの第2巻だそうです。「フォスター」というのは、1876年に博物館に遺贈したジョン・フォースター(John Forster)氏にちなんだもので、「Codex(手稿)」は、レオナルドが遺した多くのノートやスケッチを意味します。第2巻はノートブック2冊が結合されており、316ページで構成されているのだとか。レオナルドはおそらく、ミラノにある文房具店で購入した紙を持ち歩いて様々なことを書き記し、後に小冊子として折りたたんで綴じられたようです。

そこに何が記されているのかというと、テキスト、図表、図面を含み、右から左へ鏡文字でイタリア語で書かれているそうです。鏡文字、つまり鏡に写したように左右を反転させて書いているということ。面白いですね。 彼は自分で発明した特別な速記で書いただけでなく、自分のものはページの右側から左側へ向かって書き、人のために何かを書くときだけ、通常の方向に書いたのだそうです。鏡文字の目的は不明だそうですが、暗号ではないし、解読可能なので、秘密主義で発見を隠そうとしたという説は薄い気がします。左利きだったこともあり、こうすることでインクを汚すことを防いだのではないかという説もあるようですが、個人的には深い意味はなく単に楽しんで書いていたのかなぁなんて思ったりして。。これらの手稿の最終目的は出版だったと考えられているそうですが、存命中に出版されなかった理由については分かっていないそうです。

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